利用者側にとってのIT戦略


鰍hCI(文化アイデンティティ研究所)代表取締役・首席研究員 池田志朗 
「(財)横浜産業振興公社機関誌IDEC NEWS−PORT No.12掲載」(2001年春) 


1.ITとどう向き合うか
 昨年来、我が国では各界に対する急激なIT(情報技術)化策が政府主導で進められています。

 これに対して コンピュータやインターネット等のあまりにめまぐるしい技術の進展を前にして、焦りや疎外感を感じていらっしゃる方もいらっしゃると思います。
  しかしながら心配は無用。自動車の普及を例にして考えて見てください。黎明期の利用者には詳細な整備技術が求められましたが、今日の自動車ユーザーにどれほどの整備技術が求められているでしょうか?

 昨年来、巷間をにぎわして来たIT関連株はパソコン等機器メーカー、インターネット接続事業者、電子商取引等のソフト構築会社等、ITインフラ整備事業者つまり提供側でのITでした。
 それに対して一般企業、つまり利用者側にとってのIT化は、生産者と消費者が直接向き合うことによる(いわゆる「中抜き効果」)ビジネスの合理化が目的であるかのように語られて来ました。
 しかしより本質的意味は、利用者側にとってIT化はこれまでと違った事業活動と個人のあり方を誘発する点にあります。


2.インターネットと携帯電話の相乗効果
 IT(情報技術)は現在のところ、コンピュータやインターネット、携帯電話、それにブロードバンド等を代表として、情報の発信・伝達に関する種々雑多な先端技術の世界を総称しているかのように見えています。
しかしより本質的に見ればインターネットが持っている草の根運動的で自律的な自己増殖力と、携帯電話が見せる人間自身の「メディア性」(情報生成伝達物としての性格)の増幅力の相乗効果が生み出すものこそがITの神髄だと言うべきなのです。
インターネットの基本は情報の無償提供という非営利型活動にあり、その特質を活かしたものが大きな成果を得ています。

 そもそもインターネット自体が国際的なNGO(非政府組織)により運営されており、各国政府のコントロールを超えています。
ビジネスで言えばインターネット参加による社会的認知度・信頼度の向上を活かせるかが鍵であり、ショッピングサイト等で短期的に儲かっても、直接/間接での消費者への還元がなければ長続きはしません。
 またビジネス上の不明朗な隠し事は、消費者個人によってインターネット上で暴かれてしまう為、公明正大な事業活動の徹底と、失敗を隠蔽しない組織づくりが必要となります。
インターネットは社会に受け入れられるもののみを生き残らせる力を発揮します。


3.IT時代こそ個々の能力が注目される
  世紀の初頭に「自由に移動できる」自動車が人々を魅了しその後の世界を変えたように、「世界の誰もがメディアになれる」携帯電話が世紀初頭の人間を魅了しています。
 その意味でインターネットは道路網であり携帯電話が自動車だと例えることができるでしょう。

 利用者側にとってのIT戦略として、あなたに時間の余裕があるならばパソコン教室に通うのも良いでしょう。
しかしあなたが経営者なら中途半端にパソコンに触れることよりも、地域社会のなかで役立つ自社に改革すること、環境貢献等で他社に換えがたい独自の存在価値を創り出すことの方を重視すべきでしょう。
こうしたことこそがIT化時代のビジネスの勝負の分かれ目になるはずです。


 
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